【No.59】「とんでもないことでございます」
こんにちは。寺尾祐子です。
さすがだなと思った言葉があります。
言葉でイメージアップ!
作家であり、尊敬するプロのインタビューアーである
小松成美さんが、おっしゃった言葉です。
『人の心をひらく技術』を出版された6年ほど前、
講演会に参加し、少しお話をさせていただいたときのことでした。
私が、小松さんの書かれたインタビュー記事が大好きで
何度感動したかわからない、というようなことを話すと、
笑顔で、次のようにおっしゃったのです。
「ありがとうございます。
とんでもないことでございます」
心の中で
「とんでもないことでございますって、
ちゃぁんとおっしゃってる!」
と、またまた感動した私です。
人から褒められて、謙遜しながらこたえるとき、
「とんでもありません」
「とんでもございません」
と、言うことってありませんか?
これは、今は間違ってはいないのですが、
本来の使い方は、次の通りです。
「とんでもないことです」
「とんでもないことでございます」
簡単に説明すると、
「とんでもない」で、一言なので、
「ない」の部分を丁寧なことばに言い換えることは、
ふさわしくないということ。
この事実を知ったとき、
「こんな堅苦しいことば、日常では使いにくい。
今は、間違ってないんだし、“とんでもございません”で、十分!」
くらいに思っていました。
だから、私は使ったことがなかったし、
使っている人に、なかなか会えません。
小松さんは、さすがプロの作家らしく、
正しく、美しい日本語を使っていらっしゃいました。
かもし出す雰囲気もあったんでしょうね。
美しい日本語を使いこなせるって、やっぱりステキです。
言葉は生きものだから…
ことばは「生きもの」なので、どんどん変化をしていきます。
「全然、知らなかった」
「全然ダメ」のように、
「“全然”は、否定語とセットで使いましょう」
と、私は学校で習った記憶があります。
ところが、
「全然大丈夫」、
「全然いい」といった、
否定語とセットで使わないことばも、
問題ないという見方が広がってきました。
ことばの変化といえば、最近、
子どもたち、若者たちの使うことばを聞いて、
ビックリしました。
鬼ごっこは、おにご、
お金持ちは、かねも、
難しいは、むずい、
などと、いうのだとか。
「へぇ~」と驚きつつ、
年齢のギャップを感じずにはいられませんでした。
時代のことばを必死に追いかけたり、
積極的に調子をあわせたりする気は、私にはないです。
そう書きながらも、
ことばを略したくなる気持ちも、わかります。
こんなこと書いておいて、私も、
「コレ、むずい〜」
なんて平気で言っている日も近いかも?(笑)
恐ろしいのは、無自覚のまま、
だんだん染まっていることです。
環境によっても、ことばも変わってきます。
染まるのもいいし、仕方のないこともありますが、
自分は、どういうことばを使う人でいたいか、
そんなことは意識していたいと思う私です。
「とんでもないことでございます」
私も使いたいと、思いつつ、
いざとなると忘れるのか、
謙遜の気持ちが足りないのか、
褒められていないのか、
未だに使えていません…(苦笑)