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2021-04-13

「文学は何の役に立つんかね?」【自己投影 発見】

 毎朝の楽しみの1つに
新聞小説を読むことがあります。

日本経済新聞では今、
『ミチクサ先生』というタイトルで、

伊集院静さんが、
夏目漱石の生涯を書かれています。

その小説の中で、
漱石と、妻の父親(岳父)との
印象深い会話シーンがありました。

今回は、その内容の一部を紹介しつつ、
感想と気づきをシェアしますね。

文学の世界の面白さ

岳父である重一からの質問と、
漱石の答えの一部を抜き出します。

「文学というもんは、
 特に英文学は何の役に立つんかね?」

(中略)

「それは、自分の発見です。

 発見と言うとわかりにくいところが
 あるかもしれませんが、

 シェークスピアという芝居の
 戯作者がいまして、
 このシェークスピアを二年間学びました。

 そうして、
 そこに登場する人たちの、
 悲しみ、喜びを自分のことに
 置きかえるようになりました。

 そこに、
 自分の悲しみ、喜びを
 感じることがありました。

 それが
 自分の発見のはじめでしょう」

(日本経済新聞2021年4月6日付)

*改行は、こちらで勝手に行いました。
*詳しくは、ぜひ本文を読んでくださいね。

小説やエッセイを読んでいると、
登場人物に、
つい自分を重ねることって
よくありますよね?

日ごろは、
自分にどっぷり浸かった状態でしか
感じたり、考えたりすることはしないのですが、

登場人物に自分を重ねながら、

その自分じゃない自分が
何を思い、何をして、
どんな展開になっていくのかを

その人生を擬似的に味わいます。

そんな自己投影という
奇妙な距離感が、

今の自分を今までよりも
客観視でき、
自分の発見につながる、

しいては、それが、
自分自身だけの発見ではなく、

人間という生き物の
感じ方や考え方の発見でもあるのかなと。

自分が見えてくる。
世界(人間)をいつもと
違った見方をするようになる。

文学の世界には、
そんな面白さってあるなと。

だから魅力的で、
好きなのかもしれません。

日ごろ言語化したことないことが
載っていたので、
今日は、感じたことをシェアしました。

蛇足ながら、

新聞小説を書いていた夏目漱石が、
新聞小説にその生涯を描かれているのも、
何だか面白いですね。